debtのブログ

借金 クレジット

話が違う

オレの店には度々、ビルのオーナーが来店していた。

オレが、どういうわけか入居した店舗は、金を持っていなかったオレにとって、オーナーの力添えが無くてはならなかった。
オーナーが客を連れてきたり、客人をもてなすために、という理由で、店の名前はオーナーが付けたものだった。
社長からは、色々お世話になっているのだから、店の名前ぐらい譲っておけという説明だった。
 
そこに一つ、社長への不信感があった。
オレがオーナーの、オレの店ではないのか?
 
オープン早々から、オーナーは、まるでこの店のオーナーのように振る舞っていた。
多くの資産家や金持ちのイメージがそうなように、態度がデカいと思っていた。
だけど、オレだって客商売の心得はある。
お金を落としてくれる以上は文句ない。
 
オーナーには、ことあるごとに、売り上げはどうかと気にしてもらっていた。
正直、オープン当初、悪くもないのだが、開店お祝いの雰囲気が収まった後、利益が残る売り上げが出せるのか、自信がなかった。
 
オープンして二ヶ月ぐらいが過ぎたころ、帳簿を見せろという話になった。
仲の良い銀行の支店長に紹介してくれるということだった。
売り上げは一旦、夜間金庫を使った方が良いということや、帳簿をきちんと付けてくれれば、融資ができるようになるかもしれない、との内容だった。
 
その帰り道に、一体いつになれば、利益を届けに来るのか、と言われた。
売り上げから経費を差し引いた、残りのお金、そこから投資したお金を回収するのだ、という。
 
自分とオーナーでは店に対する認識が違った。
 
自分は、前の店の未払い給料の代償として、社長の知人のオーナーに甘えながらも、持った自分の店。
オーナーは社長に持ちかけた、自社のビルの空きテナントで賃貸料を発生させてくれる、雇われ店長を探していた人捜し。そこに紹介されたのがオレ。
 
社長は二人の間で双方に嘘をついていた。
 
しかし、店の準備はオレの借金で賄ったものだ。
名義もオレだ。
オレの店だと突っ張るだけの材料は、こっちの手にあった。