debtのブログ

借金 クレジット

鏡の中のオレ

国の金融機関から金を引っ張る仕事なんか、平の組員の仕事じゃない。

頭代行、上の人間の登場だった。
 
オレと仲の良いことは聞いていて、助けてやって欲しいと聞いている、必ず、融資を受け取って店を立て直すなりしないとと言う。
 
信頼たらしめる芝居、だったのだろうし、それを疑う余裕もウツワもオレにはなかった。
生き残るためには、この金が全てだ。
 
来る日も来る日も、国金の支店長とは都合が合わずに会えない日が続いた。 今ならウソかもと疑うが、半分そう思っても、半分はすがっていた。
これしかなかったのだ。
 
それにだ、オレだけが儲かる話ではなく、周囲にも金が入る話だ。
騙されているわけじゃない。
 
その後、話が進まないのは、代行が自分のことで一杯で、国金の話どころじゃないという。
 
翌日、代行から電話があった。
ビルの下まで降りてこいという。
大柄な、見事にヤクザ、風な男と一緒だった。
オレを指し、コイツだ、と言った。
後の話は直接してくれ、そういう内容だった。
ついに国金側の関係者に会えた、やはり、向こうも闇の金絡みはヤクザが絡むのか。
そう思ったが、ついに融資を受ける段階にきた、その安心が上回った。
 
代行は数十万円の札の束を受け取り、後は任せたと、そそくさと繁華街の人並みに消えた。
大柄な男は書類を取り出し、オレに署名を促した。
500万円の国金の借用書。
ではなかった。
30万円の借用書、その保証人がオレの役だった。
そんなバカな、オレは電話を掛けるも、誰も繋がらない。
知らないと言っても、オレは融資、金を渡す瞬間に立ち会っている、大柄な男はそういう。
 
死んでもなりたくなかったものにならされた。
月に二割の30万円の保証人。
 
子分に当たる常連のヤクザによると、代行は返すから大丈夫、だと言った。
代行は国金の金で返す予定なのだと。
 
そのころのオレは気付かずに、周囲からすればヤクザの一員だったし、店に来ていた他の組織のヤクザからは、これ以上の付き合いをやめた方がいいと、ずっと前から言われていていて招いたことだった。
だから、助けてもらうこともお願いできなかった。
 
ヤクザからの借金?知らんでいい。俺が出るよ。
頼もしいヤクザがいて安心もした。
それで少しは気が持ち直した。
 
鏡の中のオレには驚いた。
どう見てもヤクザの目つきのオレがいた。