愚の骨頂、だと
乗りたい車に乗ることも、買うことも叶わなかったころ。
当時の付き合っていた女性と小さなお店を持ちたいという話になった。
15坪程の店舗スペースに、その二階が住居になっている古いタイプの店舗付住宅。家賃は市の中心部で部屋を借りるのと変わらない額。色々と見て回った結果、そこを借りることにした。というよりも、予算内に収まるのはその物件しかなかった。保証金、前家賃、手数料、合計で家賃の14ヵ月分。およそ100万円。
郊外の団地の入口、安く洋服を売る。
オレにはお金も貯金も足りなかった。30万円、足しにしてやれるぐらいだった。
そんなことより、商売に向かっていくエネルギー、開業することの方が大事だったのだ。
当時の国民金融公庫にも行った。開業前、融資は下りなかった。開業後、借り換えも兼ねて再度、お願いに行った。名刺、伝票、売上の資料。だけど、相手にもされなかった。
サラ金から借りた金で起業する。
バカらしい話だ。
だけど、当時の二人にはそうするより他なかった。