debtのブログ

借金 クレジット

頼りの綱

常連客の暴力団関係者は金になる元を捜していた。

酔っ払っては、大きく覚醒剤の取り引きで儲けた昔話、懲役の話をする。
どこか憎めないタイプの人だった。
一度、辞めた女性スタッフの彼氏、半グレみたいなヤツ、と金銭で揉め、店に押しかけられた時、たまたま店で居合わせ、ヤクザらしい剣幕で追い払ってくれた。
それ以降も、中国人との仕事を取り持ったりして、 客以上の関係だった。
 
店を閉めた後は毎晩のように、一緒に飲みに出掛けた。
オレの店がうまくいってなく、金も持っていないのはバレていた。
 
彼が言うには、店の権利書、契約書と営業許可があれば、ある裏のルートで、支店長に直結し、国民金融公庫(当時)から融資が受けられる、とのことだった。
その額は500万円ほど。
150万円ほどのキックバックが発生する、が二か月分の返済をすれば、後は払わないでいいらしい。
 
形式上、程度に督促もされるが、踏み倒すことがコミになっている、金融機関の上層部もグルになっている裏の稼業、だという話。
 
書類の書き込みやコピーを済ませ、それらを渡し、ヤミ融資の説明がある場を待った。
説明とは、大きな事件にならないように、融資や返済の口裏合わせをするというものだった。
 
夜の店には銀行関係、金融関係の客も多かった。仕事の話を聞く機会も多かったし、自分が融資が受けられないブラックのころには、その仕組みを散々聞かせてもらったし、ヤミ金関係の客には融資や取り立てにも立ち会わせてもらった。
そこで支店長クラスから聞いたのは、未回収、コゲ付きには支店長への許される額、つまり、失敗していい額がある、というものだった。
そういう枠を利用して融資され、キックバックで私腹を肥やす悪徳支店長が存在すると聞いていた。
支店長とはいえサラリーマンの身分、金欲しさに手を出す。
 
オレの頭の中じゃ辻褄の会う話だった。
 
昼間から大っぴらに会うことはせず、夜の間にどこかで、という。
 
もう手を汚して手に入れる350万円と裏社会の空気に浸り、金にまみれた安心感の中に沈んでいた。