飛んだ
最終的に、店は閉めざるをえなくなっていた。
今晩、店を営業するための金、給料の支払いも微妙な店には来ないスタッフ、オレ自身が通うお金、もちろんの支払い。
営業もできなくなっていた。
そんな時に、従業員と隠しておいた合い鍵。
玄関マットの下に隠していた、が、なくなっていた。
店に入ると、カラオケの設備、未開封の酒、店の飾りにいたるまで、すべてなくなっていた。
同じフロアの店に聞くと、外国人風の人間が運んでいたという。
ビルの警備員も、不正に開かれたドアではないので、警報もならず、深夜から早朝にかけて、開錠されていた。
もう、終わり、だった。
自分の手には負えない状態だった。
サラ金、街金からの借金、130万円。
日掛けの融資80万円。
保証人になって背負った借金、30万円に月二割の利息。
客の金貸しにトイチで借りた10万円。
未払いの家賃、45万円を三ヶ月分ほど。
カラオケの未払いリース代金30万円。
店内のゲーム機の売り上げが20万円の補填。
オレは飛んだ。
仲の良かった客のヤクザとの付き合いだけが残った。
オレを知る街の人間の間では、飛んで、薬絡みでヤクザになった。そう言われ、噂が広まった。